兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第183回[2025年4月前半・プロレス2本とヒグチアイとBug Holicの4本を観ました]編

コラム | 2025.05.14 17:00

イラスト:河井克夫

ライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブ(音楽以外も含む)のレポを書いて、半月に一回アップしていく連載の183回目=2025年4月前半編です。
今回、こんなに少ないのはコロナ禍の頃以来では、というくらい、自分が観に行くライブがなかった。プロレスに二回行ったのは、観たかったから、というのも当然あるけど、このままだと2本だけだ、まずい、というのも、正直、ありました。
大丈夫か俺。と思ったが、次回=4月後半は元に戻ったので(8本)、ちょっと安心。

4月7日(月)18:30 ドラゴンゲート・プロレスリング @ 後楽園ホール

20年以上前、ドラゴンゲートがまだ闘龍門だった頃に、よく後楽園ホールに観に行っていた。で、ここ数年、また観に行きたいと思いながらも、なんだかいつもタイミングが合わなかったが、この日は直前に「あ、行ける!」と気がついて、チケットを買ったのだった。
全部で7試合。20年以上前に僕が観ていたレスラーたち、何人も健在だった。ほとんどの人が、主に前の方の試合に出るようになっていたが。そりゃそうよね、年齢を考えると。ドン・フジイ、ドラゴン・キッド、神田裕之、望月成晃、横須賀ススム、といった、40代〜50代の選手たちのことです。
横須賀ススムは、本名の望月亨で闘っていたが、同じチームの望月成晃と決裂した時に、ウルティモ・ドラゴン闘龍門校長が「望月がふたりいてまぎらわしいから、試合して負けた方が望月をやめろ。おまえ出身地は?横須賀?じゃあ負けたら横須賀な」と言い始め、負けて、横須賀ススムになったんだよなあ。神田裕之、首に深刻な怪我をして引退し、「教頭」という役職になって、スーツでリングに上がっていたよな。でもその後、復帰して、20年以上経つ今も、現役でがんばっているんだなあ。
などと、自分がよく観ていた頃のことを思い出して、それはもうしみじみしたが、そんなの読まされて誰がうれしいんだ、と自分でも思うので、やめます。
でも、どの試合もおもしろかった。また行く。

4月11日(金)19:00 ヒグチアイ @ 北沢タウンホール

『HIGUCHIAI ALL TIME BEST TOUR 元気じゃなくてもまた会いましょう』の東京公演。このツアー、名古屋と大阪と中国2本と台湾はバンド編成(※東京は12月14日にバンド編成で行ったばかり)、それ以外の10本はひとりでピアノ弾き語り。
裏切る恋人と裏切られる己を軽やかにのびやかに歌う「不幸ちゃん」、「わたしのしあわせは だれにもはかれない わたしのしあわせは だれのものでもない」ときっぱりと伝える「わたしのしあわせ」、「なんで泣かないの? 薄情だと言われた葬式で 本当のわたしを知る人は棺桶の中」という強烈なラインがある「悲しい歌がある理由」などなど、つくづくグサグサくる歌ばかり。ライブでも音源でも何度も聴いているのに、衝撃が薄まらない。
で、ヒグチアイが、その己に向ける刃の鋭さを、鋭いままで他の方向にも向けて書くようになってからの曲=この日アンコールで歌われた「悪魔の子」と「縁」も、とてもいい。
このライブの12日後にリリースされた「恋に恋せよ」(Huluオリジナルのドラマ『おとなになっても』主題歌)も、その方向に振り切れたすばらしい曲だが、この日は歌われなかった。
歌えばいいのに。と思ったが、歌わないところがこの人らしいのかも、とも思った。

4月12日(土)18:45 Bug Holic @ 下北沢CLUB Que/Club Que STREAM

ライブを観たの、ファーストアルバムのリリースの時以来で、キーボードが脱退して4人になってからは一度も観ていなかったのと、2月19日に出たセカンドアルバムがとてもよかったので、足を運んだ。いつ以来だろう。調べたら、2年半ぶりでした。この時以来。
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現在、鍵盤の分をバック・トラックで補っているのは、もともとDTM要素の強いバンドなので違和感なし。そのDTM感と、生のロック・バンドならではの荒々しさやラフさが同居しているところが素敵、と思っていたが、そこに(たぶん演奏力の向上による)ファンキーさや、ニッポン昭和AOR的な叙情性などが加わって、多層的な魅力を持つバンドへと進化していた。
メンバー4人ともキャラ立ってるし。特に、やたら男前なのにいじられキャラ、というか、メンバーとお客さんを「いじらないといけない状況」に巻き込んでいくボーカルのYu-go、とてもキュート。もっと人気出ると思う。

4月14日(月)18:30 プロレスリング・ノア @ 後楽園ホール

昨年の秋から今年の元旦にかけて大化けし、それまで目立たない新人のひとりだったのが、今やノアのチケット売り上げを爆増させているダークヒーロー、OZAWA。
生で観たい。でも週末の大きな大会は、たいてい音楽のライブと当たっているから、平日に後楽園ホールだな、というわけで、チケットを買った。
OZAWAの出番は、全8試合のメインイベントのタッグマッチで、OZAWA&遠藤哲哉×KENTA&拳王の、ノーDQマッチ。ノーDQマッチというのは、凶器の使用などのすべての反則が認められ、「リング外に出たら20カウント以内で戻らないと負け」というルールも撤廃された、何をやってもいい試合のこと。
なので、竹刀、パイプイス、ゴミバケツ等を双方が存分に使った、すさまじい試合展開になる。場外乱闘も延々と続く。OZAWAとKENTAが僕の席のすぐ前まで来て乱闘をくり広げてくれたのが、もう大変にうれしかった。
ラストはOZAWAが、自ら持ち込んだとんでもない高さのラダー(ハシゴ)に上り、下のテーブルに寝かせたKENTAめがけてダイブしようとしたが、拳王&KENTAがラダーに上ってきてパイプイスでぶん殴られ、ひとりでテーブルの上に落下、ダウン。さらに拳王とKENTAの攻撃のラッシュを食らい、KENTAに3カウントを取られた。
1月1日にGHCヘビー級タイトルマッチに勝利して以来、無敗だったOZAWAに、土がついた日になった。いやあ、いい日に来た。また観に行く。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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