LINDBERG 36YEARS ”もっともっと愛しあいまshow 2025!!!!”
2025年4月25日(金)大手町三井ホール
エネルギッシュであることとハートフルであることの両立したステージとなった。闘志あふれる、そしてファンへの感謝の思いがたっぷり詰まった、歌と演奏が展開されたからだ。LINDBERGのデビュー36周年アニバーサリーツアーのファイナル公演、4月25日の東京大手町三井ホール。福岡、大阪、名古屋、仙台、札幌と回ってきたツアーの最終地点となる東京の大手町三井ホールは、東京のオフィス街の中心地、大手町にある会場だ。平日ということもあり、スーツ姿の観客の姿も目立っていたが、老若男女、さまざまな層の観客が集っていた。オールスタンディングという形態であったため、ライブハウス的な雰囲気もある。その独特のスペースの中で、ステージ後方に掲げられた飛行機のデザインされた赤いロゴマークが存在感を放っていた。
メンバーがステージに登場すると、歓声と拍手と口笛とが起こった。渡瀬マキ(Vo)、平川達也(Gt)、川添智久(Ba)、小柳“Cherry”昌法(Dr)という4人に加えて、サポートの佐藤“darling”達哉(Key)という、おなじみの5人。渡瀬は白い衣装で、他の4人は真っ赤な衣装だったので、“紅一点”ならぬ“白一点”だ。オープニングナンバーはツアータイトルにもなっている曲、「もっと愛しあいましょ」。フリ付きの曲ということもあって、観客もともに踊っている。渡瀬が「サンキュー」と叫ぶと、「ウオーッ!」と熱き声が応えている。ライブが始まった瞬間から、一体感あふれる空間が出現。小柳のパワフルなドラムで始まったのは「LUCKY GIRL」だ。疾走感あふれる演奏が気持ちいい。渡瀬のボーカルに川添がコーラスで参加している。渡瀬がハンドクラップする観客を指さして、あおっている。ツアータイトルにある“もっともっと”という言葉は、演奏が進むほどに、エスカレートしていく会場内のテンションにも対応していた。バンドのタイトでソリッドな演奏に、客席が激しく揺れた。「それでも地球はまわるんです」では、渡瀬がウイスパーボイスまじりのボーカルを披露。弱音や本音をむきだしにした生身の歌声だからこそ、へこたれない心根までもが伝わってくるのだろう。<リンドのCD買って行こう>という歌詞の部分では、観客が大きな声でシンガロングしていた。ともに歌う喜びとともに、LINDBERGの音楽を愛し続けてきた誇らしさまでもが伝わってくるようだった。メンバーのコーラスでのフィニッシュに、拍手喝采。
「ツアーファイナルへようこそ! 日本全国各地から集まってくれたみたいで、ありがとうございます。今日はシークレットゲストも登場します。なので、普段よりも2倍濃いメイクをしてきました。その心意気を感じてください」との渡瀬のMCに続いて、川添の重低音の効いたベースで始まったのは「MODERN GIRL」だった。グラマラスなロックンロールナンバーで、平川のしなやかなギターソロも印象的だ。続いての「Re-FLIGHT ~あの日描いていた大人になってるかい?」は20周年という節目のタイミングで発表された曲だ。肌のメイクは濃くても、歌声はノーメイク。ひたむきかつ真摯な歌と演奏に胸が熱くなる。<突き進め><突き抜けろ>という歌詞では、観客も手を振り上げていた。ファイティングスピリッツと歌心を兼ね備えたバンドの演奏が見事だ。LINDBERGの音楽に聴き手を鼓舞するパワーが備わっているのは、彼らが自らをも鼓舞し続けているからだろう。平川のギターのリフで始まったのは「I MISS YOU」。みずみずしさとせつなさを備えた歌が染みてきた。平川の伸びやかなギターソロが気持ち良く響く。渡瀬の歌がバンドの演奏を引っ張り、バンドの演奏が渡瀬の歌を支えている。バンドの結束力のなんと麗しいことか。友情の麗しさを感じたのはゲストコーナーだ。
「本日はスペシャル・シークレットゲストがいらっしゃいます。岸谷香!」との渡瀬の呼び込みの声に続いて、岸谷香が登場すると、会場内から驚きと喜びの歓声が起こった。アニバーサリーの日にふさわしいゲストとの、スペシャルなコラボレーションを目撃できるラッキーさへの興奮までもが伝わってくるようだった。「ツアーファイナル、おめでとう」と岸谷。まずは渡瀬と岸谷がハグ。2人は公私にわたって、デビュー直後からの付き合いのある友人同士であり、今年2月に開催された岸谷香の『岸谷香感謝祭2025』に、渡瀬が森高千里とともにゲスト出演した経緯もある。その感謝祭では3人によるバンド、“ぷリンド千里バーグ”が結成されて、大盛り上がりとなった。今回はその流れを受けての渡瀬の誘いに、岸谷が即答して実現したのだ。なお、LINDBERGのワンマンライブにゲストが出演するのは、デビュー36年にして初めてとのこと。
岸谷が参加してのコーナーは、「今すぐKiss Me」からスタートした。岸谷はギターを持って参加。岸谷と平川が向き合いながら、ギターを弾く光景が新鮮だ。渡瀬の歌声に岸谷がハモっている。「さあ、いくよ!」と渡瀬があおると、観客もシンガロングで参加。2コーラス目は、岸谷がリードボーカルを取っている。「今すぐKiss me」は、“好き”という気持ちとその衝動をストレートに表現したラブソングだが、この夢の共演によって、“好き”の濃度がさらに増していると感じた。“もっともっと愛しあいまshow”というタイトルにふさわしい、親密な空気が会場内に充満した。続いては、プリンセス プリンセスの大ヒット曲「Diamonds〈ダイアモンド〉」。最初に岸谷がリードボーカルを取り、続いて渡瀬がリードボーカルを取る構成だ。特別な共演による特別な歌が、会場内の全員をハッピーにしていく。岸谷がギターソロを披露する場面もあった。観客も歌とハンドクラップで参加。渡瀬がタンバリンを叩く瞬間もあった。何から何までスペシャルだ。後半は渡瀬と岸谷が向き合ってスキャットしていた。岸谷、渡瀬、平川、川添が、小柳のドラム台に近づきながらのエンディング。まるで6人編成のバンドみたいに息の合った連携が鮮やかだった。
ステージから一旦、平川、川添、小柳、佐藤が退出して、渡瀬のボーカルと岸谷のキーボードで披露されたのはピアノ・バージョンの「GAMBAらなくちゃね」だった。岸谷のアレンジで、深みと広がりのある歌の世界を堪能した。渡瀬の繊細な歌声とその歌声に寄り添うよう岸谷のピアノの演奏に聴き惚れた。風が吹き抜けていく気配を感じる瞬間もあった。2人の友情がこの曲に特別な輝きをもたらしていると感じた。
岸谷が盛大な拍手の中、ステージを去り、渡瀬のボーカルと佐藤のキーボードによって、「風のない春の午後」が演奏された。2本のスポットライトが2人を照らしている。渡瀬の柔らかな歌声と佐藤のぬくもりのあるキーボードによって、会場内に温かな空気が満ちていった。曲の終盤での渡瀬の<ラララ>という歌声が、穏やかな春の日差しのように、客席を優しく包み込んでいた。
メンバーが再登場しての演奏となったのは「どうしてこっち向いてくれないのかな」。ゆったりとしたグルーヴの気持ちいいナンバーだ。平川の透明感のあるギターソロも印象的だ。小柳のドラムでのフィニッシュ。続いては、一転して重低音全開の「Sugar free」へ。ソリッドな平川のギターのリフ、川添と小柳の生み出すヘヴィなグルーヴによって、会場内の温度が上昇していくようだった。渡瀬の優美かつ繊細な歌声とエッジの効いた激しいサウンドとが絶妙にマッチしているところにも、LINDBERG独自の魅力がある。デビューから36年経った今も、渋くなったり丸くなったりすることなく、アグレッシヴな演奏を展開できるところが素晴らしい。
「ここから最後までノンストップで行きますが、大丈夫ですか? みんな、LINDBERGについてきてね」と渡瀬。その言葉どおり、高揚感あふれる「POWER」、観客がハンドクラップとシンガロングで参加した「10セントの小宇宙」、熱烈なコール&レスポンス「恋をしようよYeah!Yeah!」と、休みなくたたみかけていく展開だ。渡瀬の「ベイベー! 頼んだよ!」という声に導かれて、全員がともに歌い、こぶしを挙げている。「Magical Dreamer」では、会場内に明るいエネルギーが充満した。本編最後のナンバーは「Over The Top」。多くの困難を乗り越えてきた彼らが奏でるからこそ、この曲の根底にある不屈のパワーがダイレクトに届いてくるのだろう。観客も大きな声で、<Over The Top>と歌っている。バンドと客席のパワーを結集することによって、目には見えない何かを一緒に乗り越えていくような達成感と爽快感が漂った。
この日のセットリストは、初期の曲から近年の曲まで、さまざまな年代に発表された楽曲が並んでいた。バラエティーに富んだ楽曲が演奏されて、バンドの表現力の多彩さも堪能した。それぞれの時代に応じたアレンジが施されているため、80年代、90年代、2000年代など、さまざまな時代の空気感やテイストも漂っていて、懐かしさを感じる瞬間もあった。だが、今の彼らが演奏することによって、どの曲も2025年の今にリアルに響いてきた。LINDBERGの音楽には、聴き手に勇気や元気をもたらす機能や、夢や希望のかけがえのなさを気付かせてくれる機能が備わっている。そして、その機能は2025年の今も有効だ。
大歓声の中、再登場してのアンコール1曲目はまだ音源化されていない新曲「ブラックスパイダー」だった。九州放送の『BARKUP TV』という番組の2023年9月のエンディングテーマとして流されていた曲だが、初めて聴いた人も多かったのではないだろうか。ハードなギターサウンドを軸としたロックナンバーで、タフな歌声と強靱なグルーヴが魅力的だ。バンドの現在の充実した活動を象徴する曲だろう。「ベイベー、もう1曲行くよ~! 一緒に歌って」という渡瀬の言葉に続いては、「BELIEVE IN LOVE」。観客が大きな声で一緒に歌い、手拍子している。観客が思う存分参加できるところにも、LINDBERGのライブバンドとしての魅力がある。“もっともっと愛しあいまshow”というツアータイトルそのままの相思相愛の夜となった。だが、これで終わりではない。
「もう1曲やってもいいかな。あの人を呼びましょう」という渡瀬の言葉に続いて、岸谷が再登場すると、客席から「ありがとう、香ちゃん!」といった言葉が飛び交った。「香ちゃんが好きな曲があるんだよね」と渡瀬が言うと、「そう、これが一番好き」と岸谷。そんなやり取りに続いて演奏されたのは、ファンの間でも人気の高い「LITTLE WING」だった。岸谷は歌とギターで参加。観客ももちろん歌とハンドクラップで参加している。岸谷の歌で始まり、サビでは渡瀬が飛び跳ねながら歌っている。岸谷と平川、岸谷と川添が向かい合って演奏する場面もあった。渡瀬が「ベイベー、行くよ!」と言って、マイクスタンドを客席に向けると、観客のみでのシンガロングとなった。<明日を信じて 飛び続けるよ>というフレーズは、LINDBERGと観客との誓いの言葉のように響いてきた。曲が終わると、メンバーと岸谷に対して、惜しみない拍手が続いた。最後の最後に渡瀬からマイクなしの生声で、「夏もいろいろとライブをやるよ。次に来る時は友達をたくさん連れてきてね」との言葉もあった。
デビューから36年経った今も、メンバーそれぞれの胸の中で燃えたぎっているものがあるからこそ、こんなにも熱いステージを展開できるのだろう。アニバーサリーのステージではあるが、バンドは過去ではなくて、未来を見つめて、今の瞬間に全力を投入していた。LINDBERGは次なる地平を目指して進み続けている。デビュー記念日にしてファイナル公演のステージで、LINDBERGは37年目の第一歩を力強く刻んだのだ。
SET LIST
01. もっと愛しあいましょ
02. LUCKY GIRL
03. それでも地球はまわるんです
04. MODERN GIRL
05. Re-FLIGHT
06. I MISS YOU
07. 今すぐKiss Me (with 岸谷香)
08. Diamonds〈ダイアモンド〉(with 岸谷香)
09. GAMBAらなくちゃね (with 岸谷香)
10. 風のない春の午後
11. どうしてこっちむいてくれないのかな
12. Suger free
13. POWER
14. 10セントの小宇宙
15. 恋をしようよ Yeah! Yeah!
16. Magical Dreamer
17. Over The Top
ENCORE
EN.01. ブラックスパイダー
EN.02. BELIEVE IN LOVE
EN.03. LITTLE WING (with 岸谷香)