FUNKIST、「25年ぶんの音、今日はあなたと鳴らしに来た。全員で歌おうぜ」。大合唱と優しい雨が日比谷野音を包んだ結成25周年ライブをレポート

ライブレポート | 2025.05.30 18:00

FUNKIST 25thワンマンライブ 日比谷野音 Pride of Lions
2025年5月24日(土)日比谷野外大音楽堂

自他ともに認める雨バンド・FUNKISTの結成25周年記念ライブ、5月24日の東京・日比谷野外大音楽堂はやはり雨だった。しかしそれは、晴れの日ばかりじゃなかったバンドの四半世紀を優しく包む、あたたかい雨だ。背景は、アフリカのサバンナを思わせる緑のステージセット。どんな天気でも構わない、今日はFUNKISTを愛するすべての人にとっての晴れ舞台だ。

宮田泰治とヨシロウがフラッグを高々と掲げて入場し、染谷西郷が強烈なアカペラ・ラップでパーティーの始まりを告げる。1曲目「BORDER」から振り上げる手と歌声とダンスが客席を埋める。「25年ぶんの音、今日はあなたと鳴らしに来た。全員で歌おうぜ」――フルート・世古美月、パーカッション・kouとドラムス・Yoco(from 二人目のジャイアン)、ベース・Kai(from FREEASY BEATS)の気迫あふれるプレイに、サポートという肩書は要らない。全員がFUNKISTだ。

「ムーンライズカーニバル」から「沖縄」「ft.」へ、序盤はバンド初期の代表曲を連ねてぶっ飛ばす。揃いの振り付け、手振り、タオル回しでぐいぐい盛り上げ、世古とkouも前に出てガンガンアピール。ヨシロウのメランコリックなアコースティックギターが光る「sleep talking」をしっとり聴かせたかと思えば、「GO NOW」では二人目のジャイアンのホーン隊とボーカルMASA、さらにドロンズ石本もパーカッションで加わり、無礼講の大騒ぎ。もはやパーティーを超えるカーニバルだ。

「今日は子供たちも来てくれてます。大人たちは子供たちを守ってください。全員で楽しく笑って帰りましょう」

野音に子供たちを招待するためのクラウドファンディングは、目標の300%を超える大成功を収めた。染谷のルーツ・南アフリカに楽器を贈るプロジェクトや、様々なNPO法人を支援する「One Family Action」をはじめ、FUNKISTの25年は音楽を通じた社会活動の歴史でもある。平和と平等への祈りを込めた「バナナトレイン」から「SHINE」、深いラブソング「47climax」から「サンセットアバンチューノ」へ。グルーヴィーなミドルチューンとアップテンポを織り交ぜながら、テーマ性の強い楽曲をしっかり届ける、FUNKISTらしい「踊れるメッセージソング」たち。いつのまにか、雨がやんだようだ。

「予想もできない未来は、悪いことばかりじゃないぜ」――バンドの初期を支えた故・春日井陽子のスピリットを受け継ぐ若きフルーティスト・世古美月を紹介する染谷の声には、今を生きる喜びが溢れてる。FUNKISTのライブに久々に蘇ったフルートの音色が、2009年のヒットチューン「Snow fairy」によく似合う。すっかり暗くなったステージでトーチに炎が灯り、「ROOTS」から最新曲「流れ星」へと力強いグルーヴが様々な年齢層の観客を踊らせる。古くからのファンと未来のリスナーの両方へ向けて、FUNKISTは歌ってる。

また雨が降り出した。切ないミドルバラード「パレード」から、染谷がアコースティックギターを弾きながら即興の歌詞を繰り出し、今日を喜び、子供たちを讃え、「愛のうた」へと繋げる。深い悲しみの中に一筋の灯りを探す、希望の歌だ。「出会ってくれてありがとう」と、泣きそうな声で染谷が叫ぶ。この雨がやむまで、君に伝えよう今、I LOVE YOUーー歌詞があまりにも景色に合いすぎてる。終わらない大合唱と優しい雨が、野音を包み込む。「世界中の偉い人たちにこの景色を見せてやりたい」と染谷は言った。この先何度も思い出すだろう、素晴らしい景色だ。

ステージ上のトーチに再び炎が灯ると、それはフィナーレへ向かうラストスパートの合図。「BORDERLESS」から「V-ROAD」ヘ、まだ歌い足りない観客の大合唱が止まらない。ヨシロウと宮田が向かい合って笑顔でポーズを決める。「月下のラスタカラー」では世古がステージ前に飛び出し、宮田が短くも気合の入ったボーカルを聴かせる。「SUNRISE」では、二人目のジャイアンたちゲストメンバーもフラッグを掲げて再登場。染谷の「全員肩組め!」の号令とともに客席では見知らぬ同士が肩を組み、ラストは全員揃っての大ジャンプ。もうステージの上も下もない。全員がFUNKISTだ。

「今まで出会ってくれた人たち、みんなで向かった野音。幸せです、ありがとう」(宮田)
「みんないて、幸せです。間に合って良かった(笑)」(ヨシロウ)

一昨年の大ケガで復帰が危ぶまれたヨシロウも、満面の笑みを浮かべてここにいる。メンバー、スタッフ、ゲストだけじゃない、チケットもぎりのフラチナリズムのモリナオフミ、物販ブースのグッズ販売を担当するケミカル⇄リアクションの3人をはじめ、観客として駆け付けた仲間もたくさんいる。全員を巻き込んだアンコールは、「GLORY DAYS」「Wonderful World」そして最後は「Orion」。客席いっぱいに、スマホのライトが星空のように揺れてる。雨が降るからこそ星空の輝きが胸に沁みる、FUNKISTが雨バンドと呼ばれる理由がすでに歌詞の中にある。

およそ2時間20分で22曲。それは25年の歴史をたどりながら、未来へ向かう意思を強く感じたセットリスト。アンコールでは、7月28日、東京・渋谷Spotify O-WESTと、8月3日、長崎DRUM Be-7で、ニューアルバム『Pride of Lions-Heart-』と『Pride of Lions-Beat-』のリリース記念ライブ決定という、嬉しい発表もあった。「また、笑って会おうね」と染谷は言った。野音は終わりじゃない、FUNKISTの26年目はもう始まっている。

SET LIST

01. BORDER
02. ムーンライズカーニバル
03. 沖縄
04. ft.
05. sleep talking
06. GO NOW
07. バナナトレイン
08. SHINE
09. 47climax
10. サンセットアバンチューノ
11. Snow Fairy
12. ROOTS
13. 流れ星
14. パレード
15. 愛のうた
16. BORDERLESS
17. V-ROAD
18. 月下のラスタカラー
19. SUNRISE

ENCORE
01. GLORY DAYS
02. Wonderful World
03. Orion

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